マインドフルネス

「マインドフルネス=瞑想法」と思っている人は多いのではないでしょうか。しかし、マインドフルネスとは「瞑想」のことではなく、心の状態を表しています。英語の「Mindfullness」を直訳すると、「気を配っている状態」「意識している状態」となります。もう少し言葉を補うなら「ただ目の前のことに集中する状態」と言えます。

 

例えば、朝に温かいお茶を飲むときに、お茶の豊かな香りを味わってみる。掃除をするとき、雑巾で床を拭く際に手のひらの感覚に集中するなど・・・。このように人が「ただ目の前のことに集中する状態」でいられるようになると、脳の疲労が減って集中力や想像力、幸福感などが高まることが、近年の科学的な研究で明らかになってきました。

マインドフルネスを実践することは、毎日の暮らしの中にある一つ一つの作業を丁寧に行い、その瞬間を大切することにつながります。こうした毎日の暮らしの積み重ねが、その人の「人生」となっていきます。つまりマインドフルネスは「幸せになるための生き方」そのものなのです。

なぜマインドフルネスが必要とされるのか

マルチタスク型社会

グローバル化による競争の激化でビジネスでは常に生産性アップを求められます。科学技術の発達は目覚ましく、商品やサービスはすぐに陳腐化します。そのため、ひとつの仕事にじっくり時間をかけて取り組むことは許されなくなりました。その様な状況下で複数の案件を効率的にこなす、マルチタスク型であることが望まれています。

 

企画書を作っている時に、別の仕事の連絡を取らなければいけなかったことを思い出す。経費精算をしているときに、来週のプレゼンがうまくいくか不安になる・・・など、目の前の課題に集中できず、仕事のクオリティもスピードも落ちてしまうのです。

 

情報過多社会

スマートフォンは、さらに私たちの集中力を強力に削ぐ存在となります。スマートフォンは私たちの暮らしを飛躍的に便利にしました。外出先でもパソコンに届いたメールをチェックして返信したり、書類の作成や編集をしたりもできます。いつでもどこでも仕事ができるので、時間を有効に使えるようになりました。

 

一方で私たちは帰宅後であっても、仕事のメールを見てしまえば対応を求められるようになりました。一日のなかに隙間がなくなり、ボーッとできる時間がなくなりました。脳はいつも大量の情報の同時処理に追われているから、疲労困憊しているのです。

 

人はどんな時に幸せを感じるか

何かをしながらも、別のことが気になってしまう状態のことを脳科学では「マインドワンダリング」と言います。心(マインド)がさまよっている(ワンダリング)という意味です。

 

ある研究では、人は生活している半分近い時間、マインドワンダリング状態にあり、更にこの時の人の幸福度が下がっていることが分かっています。逆に「ただ、目の前のことに集中している状態」の時は幸福度が上がることも分かりました。

 

今の社会がマインドワンダリングになりやすい状況だから、バランスを取るためにマインドフルネスが求められているのではないでしょうか。