依存症(アディクション)

依存症は「嗜癖(しへき)」や「アディクション」と表現されることもあります。

 

お酒や薬物の使用、ギャンブル、買い物、ネットなどにのめり込み、その行為が強迫的・反復的となります。そして、身体的影響や日常生活に支障があるにもかかわらず、止めようと思いながらも自分の意思ではコントロールできない状態です。ひとことで言うと「分かっちゃいるけど止められない」状態なのです。依存症は大きく3つに分類されますが、それぞれに共通しているのは「依存対象が優先されコントロールできない」ことです。

 

物質依存】ある特定の物質を摂取することで快楽や刺激を得て、その物質に執着・依存する

      :アルコール、タバコ、薬物(違法薬物、危険ドラッグ、処方薬)など

 

行為依存】ある行為をする過程で得られる刺激や興奮を求めて、その行為に執着・依存する

      :ギャンブル、買い物、ネット、窃盗など

 

関係依存】ある特定の人との関係に依存し、歪んだ人間関係に執着する事で人との繋がりを求める

      :恋愛、共依存、DV、共依存など

 

【否認】

 依存症は”否認の病気”とも言われます。否認を克服(現実問題を認める)することから回復が始まります。その否認には2つの段階があります。

第一の否認:お酒の問題自体を認めない(自分にはお酒の問題は何もない)

第二の否認:お酒さえ飲まなければ、何の問題もない(お酒の問題はあるかもしれないが、その他は問題ない)

☆単純な否認

 問題があっても単純に無視したり、飲酒問題を指摘されると話題をそらす。事実を指摘されると突っぱねる。

☆過小評価

 飲酒問題を薄々は認めていても、生じている問題の認識が甘く、本人と周囲(配偶者や職場)とで問題に対する

 ギャップがある

☆合理化

 飲酒は仕事のストレスのため、人間関係が上手くいかないから、などと飲酒を合理化する

☆一般化

 飲酒問題を指摘すると「営業の仕事は酒なしではできない」「男は酒くらい飲めなければ」などと、自分の飲酒

 問題を一般論にすり替えて正当化する

☆攻撃

 飲酒問題の指摘に対して、攻撃的に反論する

☆退行

 いわゆる「子どもがえり」で、誰も心配してくれない、酒を止めても何も長生きする保証はない。などと言っ

 て、自分の問題に責任をとらない

 

【回復とは】

 まずは本人が飲酒問題を認めること(否認の克服)が回復のスタートになります。依存症は周囲の人を巻き込みながら進行していくので、周囲の人(家族)も一緒に回復へ向けて進んでいくことが大切になります。単純に飲まない年数ではなく、飲まない生活(断酒)を続けながら価値観の変化や生活様式の変化、人間的な成長などを含んでいます。なにもせずに無条件で回復することはありません。回復するためには、それなりの努力が必要となります。

考え方が変わる

行動が変わる

生き方が変わる

このように段階を追って回復へ向けて努力していくことが大切になります

 

☆断酒:完全にお酒を断つこと(飲まない努力をする)

☆節酒:飲む量を決める(飲む努力をする) 1日1合だけ、週に何日だけ飲むなど

☆スリップ:断酒を決意した人が一時的に飲酒すること。これが連続的になると再発となる

 

クロスアディクションと重複障害

人によっては2つ以上の依存が同時に存在したり、時をずらして他の依存問題が発生する場合があります。どちらの場合も「クロスアディクション(多重嗜癖)」と言います。また、依存症とうつ病や不安障害、発達障害など精神疾患を併発している場合は「重複障害」と言います。クロスアディクションも重複障害も、それぞれの疾患に対して適切な対応をしていくことが重要になります。